先日お会いした機械製造を生業とするA社長から、「中小企業向けに、IT化・デジタル化関連の助成金とか補助金が出ると聞いたので、当社でもやってみようと思っています。何かいいアイデアありませんか」と相談がありました。
中小企業の場合、IT化を推進する必要性は感じていても、費用的な面で二の足を踏んでしまうケースも多いことから、こういった助成金・補助金の活用が有効であることは間違いありません。
また、国の政策としても、IT化が推し進められている現状もあり、企業がこの流れに抗うことが出来ないのが現状でしょう。こういった点からも、A社長のお考えは非常にすばらしいことです。
では、何を目指してIT化をしますか?とお尋ねしたところ、残念なことに「とりあえず何でも良いから業務の一部をIT化してみる。」との回答がありました。
これは世の中的にIT化を推進するメリットばかりに焦点があてられ、またIT化・デジタル化という言葉の定義が曖昧かつ広義であるが故に陥りやすい問題ですが、目的が「ただのIT化」となってしまう方が多い傾向にあるのです。
A社長はまさにこの状態でした。この目的がただのIT化は、何も行動をしないよりは「まだマシ」というだけであって、費用対効果が薄く全くおすすめできません。
助成金や補助金を活用したとしても、会社の投資であることに変わりはありませんし、投資効果を上げるためには、社員が参加して何かしら作り出す必要がありますが、社員の負荷が上がるだけなのです。
では、何のためにIT化・デジタル化をするのか?会社の将来のためなのか、現状の経営課題の解決のためなのか、もう少し深堀りすると、新規の事業を立ち上げるのか、業務の効率化による利益体質の改善なのか。事業リスクを改善するための対策なのか。目的やゴール設定次第では検討に向けたアプローチも優先順位も異なるのは想像に容易いかと思います。
A社長の会社では工作機械の製造をなさっています。新しい契約を結ぶためには、高齢の熟練工の方による試作品の作成が重要だと伺いました。
熟練工の育成は、どこの現場でも頭を抱える問題です。現在の問題点が熟練工の技術が継承できないことだと捉えれば、熟練工の方が、退職などの理由でいなくなってしまった場合、事業が成り立たなくなるのです。
この事業が会社の主軸事業であるならば、何らかのインシデント対策を早急に打たなければならないということです。
もしIT化により、熟練工のスキルをデータとして蓄積し分析できたとしたら、この問題解決に結び付くのではないでしょうか。
試作品の作成だけを考えれば、3Dプリンターの使用を前提に、デジタルデータを作成する仕組みを導入することも効果があるでしょう。そしてこれは事業成長にも寄与する対策となることでしょう。
あと数年の間にIT化・デジタル化を取り入れた企業と取り入れられなかった企業では、大きな格差が生じるばかりか、乗り遅れた企業は淘汰の憂き目にあうといわれています。
あなたの会社においても「ただのIT化」にならないよう、正しく事業の課題や改善すべ きポイントを見極め、目的を明確にしたうえでIT化・デジタル化を進めてみてください。
IT化・デジタル化を検討したいが進め方がわからない、どこから手をつけたら良いかわからない等の困りごとがありましたらぜひ当社までご相談ください。
株式会社ライターム
コンサルティング事業部