緊急事態宣言も解除され、日常が以前の生活を取り戻しつつあります。まだまだ予断は許せませんが、企業経営されている方も、今後に目を向ける機会が増えているようです
先日久しぶりに対面でお会いした経営者の方も、「今回のパンデミックを経験して、改めて会社の将来を考える機会を得られたように感じます。世間の流れも意識して、組織内のDXを推進していくべきとの思いも強くなったのですが、適した人材がいないため、進められていないのが実情です。中小企業の経営者としてどの様に対処すべきでしょうか」とおっしゃられていました。
DXにおける人材不足は、社会問題のひとつにもなっており、『令和3年版情報通信白書(総務省)』の中でも、DXを阻む課題のトップとして、人材不足(53.1%)が挙げられています。一口にDX人材と言っても、「中心となって進める人」、「デジタルの技術に精通している人」、「データ分析に長けた人」と様々で、いずれの人材も不足しているのが現状です。外部からの採用も難しく、仮に採用できたとしても、どの程度のスキルを持っているのかまで図ることが出来ないという問題もあります。
社内でDX人材を育成しようとする場合でも、育成方法のノウハウがないため、外部の研修に依存することになり、結果として、ITの知識と経験は本職にはかなわないというのが現状でしょう。
しかしながら、DX人材の確保が難しいからといって、DXをはじめない理由には出来ません。そこで立ち止まってしまえば、競合他社がDXを実現し、競争力を高めてしまう可能性があり、結果として会社の業績が悪化してしまうかもしれないからです。
では、DX人材が確保出来ない中で、まず何を始めるべきなのか。
DXによって何を実現したいのかを見極めることです。
なぜなら、DXは、将来の会社のためになる変化を成し遂げるための取り組みであり、会社をデジタル化することは手段にすぎないからです。
社員にも顧客にとっても良い会社でありたい、収益を上げて利益を増やしたい、経営を安定させたい。今よりももっと良い会社にするための手段として、デジタル化しようとするのです。目的よりも手段が、クローズアップされてしまう傾向に流されてしまえば、使えないデジタル化にお金を投じることになりかねません。
優秀なDX人材を揃えることよりも、会社をどのように変化させて、会社の将来像を作り上げていくのかを見極めることが、最も重要になってくるのです。
会社を変化させるアイデアは、今の事業の中にあります。もし、今の事業と全く違うビジネスモデルにいきなり変換しようとしても、ノウハウが無ければリスクばかりが大きくなってしまいます。今の事業で培った長所を活かして、勝ちやすい土壌で勝負しましょう。
このためには、今の仕事、事業の仕組みを分析して、会社の長所を探すことです。デジタル化を始めるよりも前に、DXによって実現したい何かを成し遂げるために、会社の強みを見つけ出すことです。これが出来る方は、いま会社に在籍されている会社のことをよくご存じの方なのです。
例えば、もし主力製品に自信があれば、販売先を増やす営業を強化する。そのために、販売経路としてインターネットを活用して消費者に直接販売することや、海外に販売先を求めていく。技術力に自信があれば、技術力を生かせる新たな製品を作り出す。製造する製品を増やすための手段として、IT技術を導入して機械化・自動化出来る範囲を広げていく。会社の進んで行く方向性を決めて、実現のために、デジタル化を進めていく。この繰り返しこそが、DXを進めることになります。
DXを進めるためには、ITの力が必須です。しかし、どんな会社を作り上げるのかを決める行為には、ITは必須ではありません。ですから、DX人材の不足を憂うよりも、まず会社の長所を見極めて、会社の進む方向を決める取り組みを優先させていくべきなのです。
コロナによる社会環境の変化は、だれも予測できない影響を生んできました。第2、第3のパンデミックはいつ起こるかは誰にも予測できません。
将来に向けた会社の姿を描き出すために、会社の貴重な人材を活かして、会社を変化させる方向性を作り上げてください。タイミングを逃さずに、始めることが成功への鍵となるのです。
株式会社ライターム
コンサルティング事業部