先日お会いした経営者の方が、「弊社では機械に強い人が少ないのですが、一人だけめっぽう機械系に強い人がいてくれるおかげで大変助かっているのです。先日も、社内のネットワークが繋がらなくなってしまったときに、テレワーク中にも関わらず、出社して対応してくれました。おかげで、仕事に穴をあけずに済みました」とお話しされていました。
このような社員の方は、会社としても非常に貴重でありがたい存在です。そして、つい無理をお願いしてしまうこともよくお聞きする話です。
しかし、一人の社員だけにこの役割を任せてしまっていて本当に良いのでしょうか。
通常業務の中で一人だけしかできない作業は、属人化として問題になります。対策として、多くの会社では、別の社員に勉強の機会を与えることや、有識者の知識をマニュアル化することで対策しようと試みます。しかし、起きてしまうと想像していない、想定外の事象への対処ほど、スキルとして吸収することや、マニュアルとして準備することは、難しいものです。
いったんトラブルが発生してしまえば、業務を続けることが出来なくなり、会社として何かしらの損失を生んでしまいます。この損失が大きければ、結果として会社の経営を脅かしてしまうことになるかもしれません。
例えば、ネットワーク不調に対応された方が何らかの事由で対応不可だった場合、どうなってしまうでしょうか。もし、この方が退職されてしまったらどうなってしまうでしょうか。恐らく、会社として、大なり小なり、損失を被ってしまうのです。
では、どうするべきなのか。
想定外の事象を常日頃からシミュレーションすることが有効です。シミュレーションの世界だからこそ、起き得ないと思ってしまうことでさえ、考えることができるのです。
・もしこの機器が故障したら、どのようなことが起きてしまうだろうか。
・突然、大災害が発生したら、何を優先して対応するべきだろうか。
様々な事象を思い浮かべて、どう対処すべきかまで考えることで、思い浮かべた事象が本当に発生してしまっても、対処マニュアルを作るなどの準備をするきっかけにもできます。
トラブルは、発生する前に未然化することが一番です。しかし、どんなに準備しても想定外の事象は発生してしまうものです。自分だけでなく、チームとして日頃からシミュレーションを繰り返していくことは、属人的な作業を生み出さずに、誰もが対処できるようにするための教育手段として、大きな効果に繋がります。
最悪の事態にどのように対処するのか。チーム内での意識向上が図られ、事前に対策を準備することもできます。なにより、シミュレーションとして疑似体験を頭の中で繰り返すことで、実際のトラブルへの耐性も生まれるのです。しかも、この取り組みは、何のリスクも負わず、お金もかける必要もありません。
大きなトラブルの多くは、“想定外”だったとコメントされます。
想定外の事象に備えて、未然化するだけでなく、起きてしまっても柔軟に対処する準備ができていることは、会社の強さのひとつと言えるのではないでしょうか。
直面しうる事象に対し、社長だったらどう考えるのか、部門の責任者だったらどう考えるのか、社員の方に考えるきっかけを与えることも、きっと社員教育として大きな効果にも繋がっていくことでしょう。
株式会社ライターム
コンサルティング事業部