近年、多くの方がスマートフォンを利用して音楽等を楽しむ際、ワイヤレスのヘッドホンを利用していることに気付きます。

 私もワイヤレスヘッドホンが欲しくなって、いろいろとサイトを検索してみました。最新の製品は、見た目にもかっこよくきれいだったのですが、機能面の説明がさっぱりわかりませんでした。Webにあったメーカの説明には、ドライバーの再生帯域を分担してレンジを拡大させているよりも、ドライバー単独で広い周波数帯域をカバーすると、技術の高さを説明されていましたが、それは購入する人にとって、どんなメリットがあるのか。高音域がクリアに再生されると説明された別のWebサイトの説明のほうが、分かりやすく受け止めることが出来ました。すごく音質がいいことを伝えようとしていることは理解できるのですが、他の用語も専門的な説明をアルファベットと横文字の表記で伝えようとしているので、理解するためには、一つ一つの用語をWebサイトで検索する始末です。

 はじめは、読み手として知識が不足していると考えたのですが、本来Webサイトとは、読んでいる人全てに向けて、製品の良さを伝えて、購入を促そうとするものであるはずです。しかしながら、私が閲覧したWebサイトは、その分野に詳しい人にしか良さは伝わらない作りとなっており、一般の人が、購入にまで辿り着くことが出来ないと感じました。

 これは、DXに取り組もうとされている会社が、ITを導入する際に直面される話とも似ています。

 「専門のITベンダに聞いた説明では専門用語が多くて実は半分も理解できない。」と仰る経営者の方が、ITベンダの受け売りのまま、社内に向けて話をされてしまう。理解できなかったはずのIT用語を自分なりに調べて、なんとなく理解して同じ言葉のまま、お話しされています。しかし、これで社員の方に伝わるのでしょうか。

 DXを進めようとされている企業でも、ITに精通された方は、ごくわずかです。専門的な言葉で説明しても、社員の方々には、なかなか理解されません。

 これまでのコラムでもお伝えしていますが、社員の理解を得られなければ、会社を変革することは出来ないのです。

 なぜなら、会社の事業を実践しているのは、社員の方々だからです。

 社員の方々の考え方も変わらなければ、変革にまで辿り着くことは出来ないのです。

 知らない用語や難しい用語を並べて説明しても、社員の方には、うまく伝わりません。一生懸命に説明すればするほど、社内には否定的な意見が増え、本来進めたいはずのDXが頓挫してしまう理由にも、なってしまうのです。

 DXの本来の目的は、会社をより良く変えることです。IT技術は会社を変えるための手段に過ぎないということです。ITの技術を理解できないために、取り組みが受け入れられず、新たに導入する仕組みが使われなくなってしまう。会社の変革にまで辿り着けないのは出来ないのは、経営層の伝え方に問題があるということです。

 では、受け入れられるように伝えるには、どうすればいいのか。

 簡単に言えば、社員の方に分かる言葉で伝えることです。アルファベットの用語やカタカナ用語を出来る限り使わないように心掛けるだけで、ITが苦手な方でも受け入れやすくなります。

 私自身が社会人になって間もない頃、自分がどんな仕事をしているのか、周りの人達になかなか伝わらなかった経験があります。この時に実践したのが、家族に伝えるつもりで説明してみるということでした。ITの知識など全くない人に、ITのことを伝えるためには、専門用語は使わずに、身の周りの共通的な事例に置き換えて話をする方法です。一つの例えで通じなければ、また違う例えを使って説明します。これを繰り返すことではじめて、ITを理解してもらい、私の仕事にも興味を持ってもらうことが出来ました。

 社員の方にも、分かりやすい言葉で伝え、腑に落ちて興味を持ってくれるまで何度も話し続ける。会社をより良く変えるために、避けては通れません。

 ワイヤレスのヘッドホンの良さを伝えるはずのWebページが、万人向けに説明されていれば、もう少し購入意欲が湧いたのかもしれません。

 DXするためのIT導入を社員に伝える目的は、社員の方々が、なぜ取り組むのか理解して、協力してくれるよう求めることです。経営者と同じ思いを持って一丸となって取り組んでいくために、説明は分かりやすく、腑に落ちるようにすることを大切にしてください。興味が無ければ、共感も生まず、新たな仕組みも利用されません。

 会社に取り入れる新たな仕組みを使う社員の方達に向けて、理解を得られるように伝えていかなければならないのです。

株式会社ライターム
コンサルティング事業部