先日、閣議決定された「骨太の方針」に国民皆歯科検診の導入検討が盛り込まれました。要は、国民全員に毎年の歯科検診を義務化しようとするものです。国民が歯の健康維持することは、国益に直結するという考えによるものです。これは、歯の健康を維持することで、医療費が抑えられるという調査結果が元になっています。

 歯を多く残す人ほど生活の質が高くなる。歯の健康を維持することでほかの病気の誘発を抑えられる。この考え方は、会社の健康状態とも似ているのではないでしょうか?

 我が国をとり巻く課題として、新型コロナウィルス感染症、災害の頻発化・激甚化等、⼈⼝減少・少⼦⾼齢化、潜在成⻑率の停滞等が挙げられます。また、海外に目を向ければ、ロシアのウクライナ侵略、気候変動問題等、輸⼊資源価格の⾼騰等があり、内外の難局は、同時かつ複合的に押し寄せています。社会環境の課題によって、会社の健康は常に脅かされている状態です。

 皆さんの会社では、このような課題に適応出来ているでしょうか。

 社会環境の変化に対し、会社の仕組みが古いままでは、会社の健康は保てず労働生産性が低下の一途をたどるのは間違いありません。

 ある会社では、新型コロナウィルスで、緊急事態宣言が発令されたことで、社員の方が会社に出勤出来なくなり、他の人たちが埋め合わせるために残業したにも関わらず、期限内に予定していた製品数を作り上げることが出来なくなってしまいました。

 別の会社では、緊急事態宣言の解除で、企業活動をもとの状態に戻したのに、市場の潜在成長率の回復が期待を下回り、作った製品が在庫として溢れてしまいました。

 会社が提供する製品やサービスを作り出そうとしても、それが出来ない。仮に作れたとしても、売れない。これでは、労働生産性は、低下し続けることになってしまいます。このような状況に対して、手をこまねいていているわけにはいきません。

 その為にも、今、あなたの会社が、置かれている状況や、社会環境の変化に適合出来ているのか等、人と同じように会社にも定期的な検診が必要になるのです。

 では、会社にとっての定期検診とはなんでしょう。

 歯科検診が、現状を維持することや疾患の予防・早期発見に役立てるための定期的な検査だと位置付けだとすれば、会社にとっての検診とは、現在の業務を検査することに当たります。なので、今の仕事の仕組みを表している業務フローを定期的に棚卸ししてみてはいかがでしょうか?

 業務フロー制定当初では何も問題なかった業務の仕組みであっても、今の社会環境の変化と照合することで、リスクを見つけることが出来るかもしれません。もし、業務フローが整理されていないとしたら、それは大問題です。自身の現状を把握する上で、仕組みを体型化できていないと言う事は、検査する為の軸がないということになります。それでは良し悪しの判断ができないこと意味します。急ピッチで整理することをお勧めいたします。

 今年に入ってから、あるクライアントで、収益が悪化する状況が生まれていました。製品を作れば作るほど、収支が赤字化していたのです。原因は、製品を作るための材料が不足して高騰したことにあります。

 「この製品を作り続けるべきなのか」、経営層にて議論されましたが、主力製品であるこの製品の製造を止めることなんて出来ない、という意見が大半でした。そこで、業務フローを用いて「違う材料に変えることは出来ないのか」「製造工程で材料を効率的に使っているか」などの観点で、対策を検討しました。その結果以下のことが分かりました。

  • 原価の低い材料に変えることは可能である。だが、今の利用機器や作業工程を含めて見直す必要がある。
  • 作業工程で廃棄している材料がたくさんある。廃棄を減らすことが出来れば材料は節約できる。

 材料に関する改善点は、以前、業務の棚卸しをしたときには材料の価格が安定していたため、大きなリスクになり得るとは考えにくいものでしたが、もしその後に定期的な棚卸しを実施していて、もう少し早い時期に、材料の供給の変化とこの改善点を結びつけることができていれば、収益が悪化する前に対処できたはずです。

 社会環境が変化することで、起こり得るリスクは変化しており、気付いた時には、最優先で対処すべき課題になっていたのです。社会環境の変化を敏感に感じ取って業務フローを点検することは非常に重要です。しかしながら、それが出来ないからこそ、定期的に計画したうえで点検することが必要です。

 歯の定期健診をきっかけに、会社でも定期的な点検が必要だと考えさせられた話です。

 多少、自分の歯が減ってしまったけれども、少し我慢すれば生活に支障はない。こんな風に考えて治療をせずに過ごしてしまうと、問題は大きくなってしまいます。65歳以上で自分の歯が20本以上ある人と20本未満の人を比較すると、20本未満の人の認知症発生は1.9倍も高いというデータもあります。転倒で怪我をするリスクは、2.5倍になるというデータもあります。

 定期的な業務フローの棚卸は、無理なく出来る予防措置です。面倒くさがらずに、やるべきことを実施する。これが、あなたの会社を守ることに繋がるのです。

株式会社ライターム
コンサルティング事業部