先日、数年前に弊社に相談に来られた経営者の方に再会しました。初めてお会いした時に、「この会社を次の世代に繋げていくためにDXに取り組んで行きたい」と力強く語っていたことをよく覚えています。

 取り組みは順調に進んでいますかとお聞きしたところ、「事業の仕組みを変える取り組みも、やっと成果が表れてきました。当初は困惑していた社員も理解を示してくれ、うまく回転し始めたところです。先日も、社員との会食で、これからどんな会社に変えて行くかが話題になり、話もおおいに盛り上がりました」と嬉しそうに話してくれました。

 会社を変えて行くことは、痛みも伴う場合があります。でもこの会社では、変化を楽しんでいられるように感じることが出来ました。また、経営者の方も「一昨年、業務を可視化して、改善ポイントにも優先順位をつけてあります。苦労して業務の可視化をしたおかげで、この先数年は実施すべき取り組みに悩むこともありません。」と、計画した取り組みを最後までやりきる意欲に満ちあふれておられました。

 変化を楽しむ姿勢は、本当に素晴らしいです。きっと、この会社は自分達の力で会社を変えていくことができるでしょう。

 しかし、既に計画化されているとはいえ、何年も前に分析した結果を元に決めた優先順位に沿って、取り組みを推し進めていくことが、本当に意味のある変化に辿り着くことになるのでしょうか。

 取り組みを進めている中で、「このまま進めてもいいのだろうか」と、立ち止まってしまうことが危惧されます。なぜなら、何年も前に見極めた課題が、今も同じ優先度とは限らないからです。今、もっとも対処すべき優先度の高い課題を見過ごしてしまっている可能性があるからです。

 会社の課題の多くは社会環境の変化から生まれ、常に変化し続けています。社会環境が変化を続けるということは、会社の課題もその変化に合わせて姿を変えているということです。つまりは、取り組むべき課題やその優先度は時間の経過に合わせて見直しが必要になる、ということになります。

 一昨年、新型コロナウィルスによるパンデミックが起きた時、リモートワークの準備や属人化解消に向けた取り組みが最優先に求められました。遠い国で戦争が起きて、物価が変動し、必要なものが手に入らなくなるかもしれない可能性が出てきた今、原材料の仕入先を見直し、新たな材料を使用する新製品の開発検討を進める必要性も高まってきています。一刻も早く対処すべき課題が、目の前にあるはずなのに、2年前に計画した業務改善計画を推し進めているようでは、会社の未来を作り上げることなど出来ないのです。

 社会環境の変化に応じて改善ポイントを見つけ、課題に優先順位をつけて取り組みを計画することは、地道で大変な労力を伴う作業です。過去に立てた計画通りに進めても一定の効果は得られるでしょう。でも、一番意味のある効果を手に入れるには、今一番優先すべき課題に取り組むことです。これを見つけるためには、地道な作業を怠らず繰り返し行っていかなければなりません。それは経営者であるあなただからこそ出来ることです。

 今一番優先すべきことが何であるのか、なぜそうするべきなのかを繰り返し考え、社員の方とともに協力して取り組み続けていく。社員の方の理解をさらに深め続けていく。きっとその先には、社員の方とともにDXという本当に意味のある変化も手に入れることが出来るでしょう。

株式会社ライターム
コンサルティング事業部