先日発表された信用調査会社の報告では、企業の人手不足が、新型コロナウィルスの影響が出始めた2020年2月の水準まで上昇していると報告されています。営業時間の制限が段階的に解除されてきている飲食店やDXに取り組んでいるIT業界の不足が顕著ですが、その他の企業を含めても約半数(47.8%)の企業で正社員が不足しているとのことです。人口減少による労働者不足も続いていることを考えれば、更に人手不足が問題になってくるのでしょう。
先週も、ある会計事務所の経営者の方が、「人手不足の問題を解消するために、仕事の多くをシステム化したことで、今まで時間がかかっていた顧客からの文書を整理する作業が大幅に効率化しました。リモートワークで実施できる割合も増えたので、社員も喜んでいます」と話されていました。
この会計事務所では、多種多様な顧客との契約毎に、顧客企業に合わせ、受領した書類の入力業務に多くの労力を割いていて、その入力作業の大半を若手社員が担っていました。そのため、若手社員が入力業務に追われ、本業である未来会計の導入提案を行うための分析業務に費やす時間をうまく捻出できないことが課題でした。今回、今年改正された電子帳簿保存法への対応への備えも相まって、利用していたソフトウエアを変更する決断をされたことが、良い方向に向かうきっかけになったようです。
「では、若手社員の方は分析業務に割くことができる時間が増えたのですね」とお聞きすると、「実はシステムを管理する役目を担える社員がおらず、若手社員にその対応を分担しました。結果、若手社員の分析業務に割くことができる時間はあまり変わっていないのです」。
若手社員の負荷を下げて、その稼働を本業としての分析業務に費やそうとされていたのに、そうはならなかった。ITの導入が、残念ながら本業の強化に結び付いていないとおっしゃるのです。若手社員がノウハウの少ないシステムのお守りをすることで、この先もきっと本業以外の新たな課題への対策に追われてしまうことになるのでしょう。
ではどうすべきなのか。
本業に結びつく部分とそうでない部分を整理し、本業に結びつかない部分は切り離して自分達で行わなくていい業務の範囲を広げることです。システムの維持保守として、データをバックアップしたり、ウィルスソフトの確認を実施したり、データベースの容量を変動することは、外部の人に任せてしまえばいいのです。クラウド化して、システムの維持保守を専門の人に任せてしまえば、セキュリティ対策も含め、確実に効率よく対応できます。
若手社員が実施しなければならない会社の仕事の範囲を減らせば、若手社員がより多くの時間を本業に費やせます。会社の収益も上がるでしょうし、DXを進めることで本業をより強化した会社の姿により早く近づくことが出来るようになるでしょう。
DXが叫ばれ続けている現在、IT導入により会社をより良く変えていくための改善は、速度を上げて効率的に実施することが求められます。このためには、自分達で本当にやるべき範囲を見極めて、やるべき部分だけに集中することです。会社にとってやるべき部分とは、収益をあげる業務に直結する部分です。それ以外の部分は必要ならばアウトソーシングも検討しましょう。収益をあげる業務に会社のリソースを集中し、あなたの会社が提供する製品やサービスをより魅力的にして、より多くの顧客に提供できるようにすれば、会社は必ず発展することでしょう。
IT化を進めて自分達ではやらなくてもいい範囲を広げることで、より本業に注力すれば、今いる人材を有効に活用しながら経営基盤の強化を果たすことができるはずです。社員の方たちとってもより魅力的な会社へと変わっていくことになるでしょう。
将来の課題でもある労働者の不足に会社として出来る対策は、一つではありません。今いる人材を有効活用できる環境を作り出すことはその対策にも繋がります。やることを減らして、本当にやるべきことを強化する、あなたの会社はできていますでしょうか。
株式会社ライターム
コンサルティング事業部