昨年発足したデジタル庁も、昨年12月末に『デジタル社会の実現に向けた重点計画』が発表されたことにより、ようやく動きが活発化しつつあります。この流れとは直接結び付くわけではありませんが、今月より、『電子帳簿保存法』が改正され、来年には電子インボイス制度も開始されます。企業経営にも、少なからず、影響する法律改正となるでしょう。

 先日も、当社のセミナーに参加された繊維メーカの経営者の方が、「出来るだけIT利用するよう会社を変えていきたいと考えています、DXで将来を見据えた経営ができるよう、今出来る範囲でIT化を始めたいと考えていました」と発言されたのですが「でも、社員がついてきてくれません」とも、吐露されていました。

 これまで特にITを利用せずとも業績を維持・向上させてきた会社の場合、急にIT導入に踏み切ったことで社内の反撥に会うという話はよくある話です。

 反撥する社員の方に話を伺うと、機械よりも人の経験と技術を生かすべきだ、今までうまくできているのに変える必要などない、余計な仕事が増える、うまく使えそうにない、といった意見がよく挙がってきます。これらの意見には一見共通点はないように見えますが、よくよく話をお聞きすると、結局は、ITを理解したくない、やり方を変えたくない、といったネガティブな感情から発せられている言葉であることがわかります。

 なぜ、理解したくない、やり方を変えたくない、と考えてしまうのか。

 この理由は、ITを導入することが、自分のメリットとなることが十分に理解できていないからです。DXを進めようとする経営者は、会社の将来を見てこう変わりたいというビジョンを持って進めますが、社員一人ひとりにとってそれがどんなメリットになるかを伝えなければ、理解も共感も得ることができず、いかに会社にとって大切なことであっても、社員にとっては他人事になってしまいます。

 大切なことは、なぜIT化が必要なのかを経営目線でのメリットだけでなく、社員目線でのメリットを具体的に示して、共感できるレベルとして伝えていくことです。

 例えば、今身近に抱えている課題がIT化により解決することを示せば、社員が自分にとってのメリットを理解するきっかけになります。経理部門の方たちには、月末の繁忙期に纏めて提出される書類を捌くために行っている深夜残業が、RPAによって夜間のうちに自動処理できることを示す。業務部門の人達には手作業によって発生していた作業ミスによるやり直しが、RPAによって減ることを示す。軽微だけど毎日会社に行かなければ処理出来ない作業がありなかなか有給休暇が取得できない管理職の人達には、クラウド上のサービスを利用してリモートでの作業を可能にすることによって、旅先での作業も可能となり休暇が取得できるようになることを示す。

 そのうえで、会社としてIT化によりどのように変化したいのか、いつまでにどのような計画で進めるのか、それらをビジョンとしてしっかりと伝えれば、社員はきっと他人事ではなく自分事として捉え、やらされ感もなく前向きに取り組んでくれるはずです。

 どれだけ素晴らしいビジョンを描こうとも、会社の成長につながる効果を生み出すことができなければ、取り組みへの投資が余計な出費となり経営を圧迫することにもなりかねません。

 経営者は、会社をどう変えていくかを考えるのと同時に、新しい取り組みを全ての社員の理解を深めて共感を生み出し成功に導く責務があります。IT化への反撥は、感情に左右されるケースが大半です。マイナスの感情をプラスに転化し、社員が一丸となって取り組むことが出来れば、もっと素晴らしい会社に変わるチャンスを掴むことになるでしょう。

株式会社ライターム
コンサルティング事業部