三寒四温を繰り返しながら、ようやく春らしくなってきました。3月21日で全国の蔓延防止等重点措置が解除され、生活スタイルが早く戻ることが期待されます。4月には、多くの企業でも新しい年度が始まり、新たな施策に取り組む機会も多くなるでしょう。

 我々のクライアント企業でも、前年度に取り組んだ施策、特に事業をデジタル化する取り組みを次の段階にステップアップされる経営者の方が増えています。その半面、せっかくのDXに向けたデジタル化の取り組みを中断しようと考える経営者の方もいらっしゃいます。

 「デジタル化に向けシステム導入したけれど、思っていたような投資対効果に繋がってきません。今の取り組みを見合わせようと考えています」。せっかく投資して取り組んだ施策なのですから、期待した効果に繋がらなければ、諦めようと決断してしまうことも理解できます。これまでアナログを中心おした事業運営をされてきた企業にとっては、デジタルの導入は未知の領域への挑戦ですから、思ったとおりに進まないことも多々あるでしょう。

 しかし、取り組みの目的をもう一度思い返してください。デジタル化は、将来訪れるデジタル社会において会社の発展を実現するための取り組みです。ここで停滞させてしまえば、会社は何も変わらないままです。果たしてそれでいいのでしょうか。

 デジタル化した効果をどのように判断するのかは非常に重要なポイントなのですが、もし、事前に定めたKPIをもとに短絡的な結果だけを見て判断してしまっているとすれば非常に危険です。短期的な目線で良かったとかダメだったとかを決めつけて立ち止まってしまえば、長期的な先にある本来成し遂げるべき何かを得ることは出来ないからです。それこそ取り組みにかけた費用も人の苦労も無意味になるだけです。

 ではどうすべきか。始めた取り組みによって生まれた短期的な結果をもう一度評価して分析を行うことです。そして、長期的に成し遂げるべきこととの間に生まれたギャップを取り除いて軌道修正するのです。

 なぜなら、どんなに周到に準備して始めた取り組みであっても、いざ始めてみれば、目に見えなかったギャップが存在し、施策を阻害してしまう場合があるからです。KPIの設定に間違いがあった、市場やビジネス環境に変化があった、事前準備で想定した前提が誤まっていた、その理由は様々でしょう。

 ある卸売販売会社では、昨年度経理システムを導入して、領収書などを電子で経理部門に提出する取り組みを進めました。経理部門を含めて全社的にリモートワークを普及させようと考えたからです。半年後、経理担当のリモートワーク率を調査した結果、KPIとして設定した目標と比較して実施率が低かったために、一旦は取り組みの効果は小さいと判断されました。

 しかし、改めて原因を調査分析したところ、リモートワーク率の上昇に繋がらなかった理由が、経理システム以外にあることが分かったのです。ある経理担当は経理システムの導入目的を十分に理解しておらず、わざわざ本社に出社して経理システムを使っている、立て替えた経費をすぐに現金精算したい社員の方は、経理部が出社していることを知っているので直接請求しようと出社してしまう、といった具合に、経理システムの狙った使い方から反した利用ケースが後を絶たなかったそうです。その会社では、経理部門に改めて経理システムの導入目的を伝えてそのメリットを十分に理解してもらったことで、本来狙っていた経理システムの使われ方がされるようになり、1年後には飛躍的にリモートワーク率が上昇する結果となりました。

 実運用を始めて、見えてきた小さなギャップを修正して会社にフィットさせていくことが、施策を成功に導くのです。

 どれほど入念に準備をしたとしても、新しい仕組みをすぐに会社にフィットさせることは簡単ではありません。だからこそ、なぜ期待したほどの効果を得られなかったのかを評価してギャップを明らかにし、原因を分析してギャップを埋めることを繰り返していくことが重要になります。そうすれば、きっと最終的には望んでいた効果を得られることができるでしょう。何より、取り組みを繰り返すことは、変化に取り組む企業体質を作り上げることに繋がっていきます。計画立案時に決断した施策をやり遂げることが出来るかどうかは、取り組み後の評価を繰り返し行えるかどうかが成功の鍵となるのです。

 短期的に効果を得られなかった施策をすぐには失敗と捉えず、うまくいかなかったポイントを真摯に受け止めて、ギャップを埋めていく。この繰り返しこそが、現状を変革し続ける企業風土を築き上げていきます。

 これまで取り組んだ施策はたくさんあるけれど、期待したほどの効果を得られなかったという経験は、どなたもお持ちでしょう。取り組んだ結果を今一度評価し、その取り組みが本当に失敗だったかを検証することで、結果が全く違うことになるかもしれません。新たな年度のはじめに、変革し続ける企業風土を作り上げるための行動に、取り組んでみてはいかがでしょうか。

株式会社ライターム
コンサルティング事業部