遅くなりましたが、新年最初のコラムとなります。本年もよろしくお願いいたします。
昨年は新型コロナの影響が長引いて、企業経営においても大きな転換期を迎えられた企業も多かったのではないでしょうか。今年も、オミクロン株の話題が先行してはおりますが、皆さまにとってもよい1年となりますことをお祈りしております。
年始早々にお会いした金属加工会社を経営する方も、「30年後も経営を続けるために、当社もDXを進めます。今始めることが大切なのですよね」とお話しされていました。
積極的な取り組みをされようとしていることから、私も大いに興味を抱き「DXとしてどのような取り組みをされるのですか」とお聞きしたところ、「今までの業務に捉われずに、コロナ過での巣ごもり需要を見込んで、新たな商品開発を進め、ECサイトを立ち上げて新規の販売ルートを作り上げたいと考えています」と仰っていました。
これをお聞きして、この会社のDXが失敗に終わってしまうのではないかと危惧せざるを得ませんでした。
どうして、危惧を抱いてしまったのか。それは、DXの考え方を歪めて進めようとしていたからです。
確かに、DXは「データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革する(2018年経済産業省『DX推進ガイドライン』より抜粋)」と定義されており、今までの業務に捉われずに新たな取り組みに挑む姿勢は間違っていません。
しかしながら、中小企業がDXを始める場合には、はじめから会社を大きく変換させようとするのではなく、まず既存業務に着目して、小さな課題から対処すべきです。闇雲に新たなビジネスモデルを追い求めても、失敗するリスクが高まってしまうからです。
まずは、経営者が中長期的な会社の姿を明確に社内に伝えたうえで、現在の業務の改善すべき個所を見極めて順序立てて対処し、確実に中長期的な会社の姿に変えていくことが正しい流れです。
DXを進めてどうなりたいのか、DXを進めて、何を得たいのかが、明確になっていなければ、単なるIT導入で終わってしまいます。
会社の姿を変えるためのIT化を進めるためには、なりたい姿の足枷となっている社内業務のどの部分を自動化するのかを見極める必要があります。
そのためには、まずは業務の現状を把握することです。改善ポイントを見誤ってしまえば、途端になりたい姿に行き着くことが出来なくなり、取り組みの成功はありません。
もし、作業の一部が、属人化したままの状態で闇雲にデジタル化を進めても、キーとなる一人の社員が病気となってしまえば、製品やサービスが提供できず、業務を継続することが出来なくなってしまいます。しかし、属人化してしまった業務プロセスをAIによる自動化によって改善することが出来れば、キーとなる社員が病気したとしても業務継続が可能となります。この改善を繰り返していけば、いずれは会社全体の属人化問題が解消されるだけでなく、品質や効率をも改善し、競争力が強化されることにもなるのです。
きっかけは、一つの業務プロセスの改善であっても、小さな取り組みを継続して進めていくことが、会社が抱える属人化問題の解消といった大きな変革をもたらすことになります。まさに、DXを成し得たこととなるのです。
DXを難しく捉えて身構えるよりも、まずは小さいことから始めて、少しずつ変化を加え、結果を積み重ねていくことが、大きな変化になります。大きく変化していくために、今の状態を見て、状態をしっかりと見極めることで、会社を変革することはできるのです。
30年後を見据えた経営をするためには、一度ですべてをやりきることはできません。中小企業ならではの機動性を生かし、小さな取り組みに速度を上げて実施していくこそが、大きな目標にたどり着くことが出来るのです。
株式会社ライターム
コンサルティング事業部