9月1日は防災の日ということもあり、毎年この時期は多くの企業が防災訓練を実施されています。その代表例が避難訓練かと思います。
小中学校で避難訓練を実施すると、外に避難する際に思わず上履きから外履きに履き替えてしまうことがよくあるそうです。上履きに泥がつくのが嫌だから、普段は上履きで外に出ると先生に注意をされるから等の理由により無意識のうちに普段の「習慣」が行動に出てしまうのです。習慣となった行動は簡単には切り替えができないものです。
これは訓練だからではなく、実際の災害時も起こりうる事象であることを認識する必要があります。いくら万全なインシデント対策を施していても、日常とは異なる行動を取るためには、訓練が必要不可欠です。
IT業界、とりわけ社会インフラを担うシステムにおいては、災害対策は万全を期す必要があります。サーバ停止に備えバックアップセンタを構築していても、実際の災害をシミュレートしながら災害対策訓練を実施します。サーバの切り替え手順だけでなく、連絡体制、切り替え後の復旧確認等、どのような状況においても業務が遂行できるよう訓練を行うのです。災害大国である日本においては、今後もこの訓練がよりリアルになる傾向はさらに強まるはずです。
弊社のお取引のある会社でも避難訓練を実施されておられますが、先日、毎年の訓練が「形骸化」しているとのお話をお伺いしました。
東日本大震災等の大規模災害が発生した直後には訓練の重要性が説かれ、真摯に取り組まれるものですが、やはり時間の経過と共にその意識は薄まり、このような形骸化を招きます。また、形骸化を引き起こすもう一つの原因として、毎年同じように決められたシナリオ通りに行動する、いわばマニュアルありきの訓練を実施されている方が多いことも一因です。
インシデントに直結する災害等は、どのようなケースで発生するか検討もつかないものであり、発生する時間帯(早朝、日中、夜間)によっても、シチュエーションが大きく異なります。そして直面する様々な出来事に対し、必ず人の判断が介在することは間違いありません。
訓練の目的といえば、いざ目の前で発生している様々な事象に対して冷静に対処可能となるように予習を行い、判断力・応用力を養うこと。そして、訓練による事前シミュレーションを通して、現状のインシデント対策の妥当性を図ること。これにつきるのです。
避難訓練の実施は消防法という法律で義務づけられているが故に陥りやすい問題ですが、語弊を恐れずに申し上げますと、この義務感だけで効果のない訓練を実施することは全く意味がありません。
訓練中に対処できないようなシチュエーションを見つけ出し、現状の仕組みに改善点が見つかった時こそ訓練の有効性が発揮された時です。つまり、損失を被ることもなく、仕組みの見直しや、改善点を見つけ出すことができるのです。
効果的な訓練は従業員の身を守るためだけではなく、被害を最小限にとどめて事業を早期復旧できるようにするためのものであり、経営においては必要不可欠です。
あなたの会社に起こりうる災いを想定し、効果的な訓練が実施されているかを確認してみてください。
あなたの会社のウィークポイントが見えるかもしれません。
株式会社ライターム
コンサルティング事業部